第3話 薫の儚い社交ダンスレッスン
弦巻家
弦巻家の応接室では、薫がみんなを待ち構えていた。薫のおススメは社交ダンス。社交ダンスは大人のたしなみって感じがするけど、意外とハードな動きをするからたいへん。美しく踊るためには、指の先からつま先までくまなく気を配りコントロールする必要がある。
社交ダンスは運動にもなるし、同時に優雅さを身に付けるのに適した、とても儚い趣味なのである。薫はその社交ダンスを沙綾たちに教えてくれるというのだ。またとないチャンスだ!ここにいるメンバーは社交ダンスの経験もないし、薫一人でだいじょうぶなのだろうかと友希那は心配になった。
薫は沙綾をリードし、ワルツのリズムを教える。薫は沙綾と踊ったのは、結婚式場でのモデルを任された時以来のことだと、とても嬉しそうにしている。実際はダンスなんてしなかったし、とてもたいへんなことがあったのに、覚えていないのだろうかと、沙綾は不思議に思った。
でも、薫のリードで、沙綾はダンスがとても楽しいものだと知った。二人を見ていたこころも、ワクワクしてきて踊りたくなってきた。
みんなで音楽に合わせて、ワルツのリズムを刻む。薫からいろいろなステップを習い、ダンスのおもしろさがだんだんと分ってきた。
今日の趣味探しは、ジャグラーから始まり、ダンスで締めくくりできたけど、沙綾は趣味にできそうなものを見つけたのだろうか?
沙綾は、どれも楽しかったけど、趣味として続けていきたいものとは少し違う感じがしていた。ならば、もっと違うものにチャレンジしてみようと、モカは沙綾を誘った。
沙綾はみんなに付き合ってもらうのは申し訳ないと思ったが、一方で友希那は最後まで付き合うつもりだった。ただ、次の回を誰に頼めばよいのかは不明だが…。
第4話 レッツボルダリング!
CiRCLE カフェテリア
待ち合わせ場所に来てみると、なんと今回の助っ人は千聖と彩だった。二人の先輩たちが、自分の趣味探しを手伝ってくれるとは…。沙綾はとても嬉しくなった。
運動靴と着替えは持参したけど、もしかしてスポーツ?そう、千聖が教えてくれるのはボルダリングだ。
ボルダリングというのは、壁を登るスポーツだけど、この競技の良さは、体力づくりはもちろんのこと、バランス感覚や判断力が鍛えられるのでトレーニングにはピッタリ!おまけに、達成感も得られる。昨日登れなかった壁に登れるようになれば、自分の努力や工夫を実感できるようになり、趣味としては言うことなし!
ボルダリングジム
初めて体験した彩は、疲れるわりにはうまく登れなくて、千聖からは何度も手が外れて落ちたことをからかわれた。
友希那はといえば、予想以上にキツかったけど、その分とてもいいトレーニングになったという感想をもった。体も心も鍛えれば、長時間のライブもバテずにやれるのだろうか…?もしかしたら歌の力強さも増すかも!
沙綾はボルダリングをやってみて、もともと体を動かすのは好きだから、趣味にできるかもと思った。でも始めたとしても継続できるかどうか…。レッスンともなればお小遣い的にも厳しくなるし、もっと手軽な趣味の方がいいのかもしれない。
千聖は、何か代案を出してくれるかと彩にふってみたが、彩はすでにお疲れモード。一旦落ち着いてよく考えてみたいと、沙綾は思った。
第5話 カメラに残る記憶
カフェ
千聖の提案で、近くのパンケーキのおススメ店に行ってみることにした。千聖が勧めるだけあって、美味しいパンケーキだ。パン好きのモカも、クロワッサンを絶賛する。
そして一番お疲れモードだった彩の話題に。ペース配分なしの全力投球。いかにも彩らしいと褒められているのか…それとも?
みんなでくつろいでいたが、一向にこれだ!と絞り込めない沙綾は、みんなに申し訳ないと思った。しかし、そもそも新しい趣味探しをしようと考えたのはなぜだろう?
そう千聖に問われて、沙綾は回答に困った。ポピパのメンバーたちがそれぞれに新しい趣味を始めていて、それが沙綾の目にはキラキラと輝いて見えた。みんなの影響を受け、いいなと思ったので、自分も新しい何かを始めたいと思った…そんなところだ。
影響された結果として、自分自身が何か新しいことを始めたいと思ったのなら、今がまさにふさわしいタイミングなのではないか。素直に影響に流されてみることも重要なのではないかと友希那は持論を語る。
沙綾はこれまで撮り溜めてきたカメラの画像を見直してみることにした。こころはジャグリングを教えてくれた。麻弥からは電子工作を。そして薫は社交ダンスを。他にもいろいろな写真をたくさん撮り溜めていた。後で撮った写真を振り返るのが楽しいのだと、沙綾。
だから沙綾の家には、アルバムがたくさんある。自分で見るだけでなく、みんなに見せるのも楽しいし…そう話しながら、沙綾は、ハッと気づくことがあった。
エンディング 記念写真
カフェ
今日の趣味探しを手伝ってくれた仲間たちと一緒に、沙綾は記念写真を撮ることにした。
沙綾は楽しそうに何度もカメラのシャッターを切っていた。どうしてカメラなんだろう?他にも楽しいと思える体験はたくさんしてきたはずなのに…千聖はそれが不思議でしかたがなかった。
みんなで一緒に写真を見ている時、沙綾は気づいたのだ。楽しいことを体験するのは好きだけど、それ以上に「楽しかった時間」を友だちと共有するのが大好きなのだと。
沙綾の撮った写真の中で、みんなが楽しそうに笑顔で笑っている。どれもこれもみんな生き生きと活動している写真ばかり。
今日のこともしっかりと記録に残しておきたい。記念写真…。沙綾のために、そしてみんなのために、楽しい瞬間瞬間を大切に記念写真に残しておこう。でも、大事なのはその写真の中に、仲間の姿と共に沙綾自身の姿があるということ。
数日後 花咲川女子学園 中庭
いつものようにポピパの仲間と一緒にお弁当を広げた沙綾は、どことなくいつもよりテンションが高い。さっそくそれに気づいた有咲が尋ねる。
沙綾は、そろそろとこの前撮った写真をみんなに見せた。沙綾の撮った写真の中で、みんなが楽しそうに笑顔で笑っている。どれもこれもみんな生き生きと活動している写真ばかり。沙綾の思いがこもっているから、ポピパのみんなの心に何かが響いた…。
コメント