第15話 笑顔のおすそ分け
CiRCLEスタジオ
ポピパのメンバーであるたえは、殆ど説明もなしで、友希那をスタジオへ連れてくる。他にも蘭それに千聖、花音…etc.5グループのメンバー全員をスタジオに集め終わった。つまり強制連行というわけだ。
無理矢理に連れて来られたメンバーたち。事情が分からず、蘭はポピパのりみに噛み付く。強制連行はポピパの香澄が思い付いたことなんだけど、こうでもしなきゃ、全員を集めることはできなかったのだ。香澄は前もって、楽器を持ってくるようにみんなに伝えていた。そして、これからみんなで演奏しようと提案したが、みんな訳が分からず、きちんとした説明が欲しかった。
しかし、香澄は説明するでもなく、とにかく演奏することを促す。何か訳があるにちがいないと踏んだリサは、快く受け入れ、Roseliaが取りあえず、まず1曲演奏してみることになった。紗夜も承諾し、演奏が始まった。そして、次々にそれぞれのグループが演奏を終える…。
全員の演奏が終わり、香澄はみんなに問う。今、どんな気持ちでいるか?
そして香澄は、おもむろに話し始める。みんなの演奏を聴いて、すごく楽しかった!ドキドキした!聴くのも演奏するのも…。それを聞いて、はぐみもバンドで演奏する楽しさを素直な気持ちで表現する。それに、日菜も、つぐみも…。あの蘭も、反論はしない。
音楽を演奏している時は、ドキドキして、楽しい気持ちになれる。みんなの音楽はそれぞれのバンドで異なる特性がある。だけど、音楽をやっている時の、この楽しいと感じるこの気持ちは、どのバンドに所属していても、みんな一緒なのではないか?
だから、この気持ちは1つなのだと考えれば、きっとイベントはうまく行く。横から巴が、香澄の思いを繋ぐ。音楽をやる者同士、ハートはひとつ!
彩も、もし考えがまとまらなかったり、離れたりしたとしても、この気持ちを思い出せば、うまくいくかもしれない…そんなふうに思った。
千聖も、ステージは自分たちだけのものではない。観客が来て初めて成り立つもの。自分たちばかりが楽しんでいても意味がない…。今この場で感じたこの気持ちを、観客にも感じてもらえるようなそんなイベントにすればいいのではないか…と思った。
沙綾もまた、自分たちのこの気持ちを、ここに集まったバンドメンバーだけのものにしておくのは、ちょっともったいない気がすると…。
こころは、この考えは、「笑顔のおすそ分け」だと思った。
リサはとても冷静に、紗夜や友希那に語りかける。演奏についてはどこのバンドよりもRoseliaが上手いかもしれない。だけど、それ以外はまだまだ未熟なのかもしれないと。今すぐに、楽しいという気持ちが分からなくてもいい。ただ、みんなと一緒に、少しずつ変わっていけばいいのだと優しく諭す。
どうやら、強制連行した甲斐があったようだ。やっとそれぞれのバンドが1つにまとまったようだ。だけど、これで終わりじゃない!みんなでイベントを成功させなければ!!
第16話 作ればいいんだっ!!!!
CiRCLEスタジオ
「笑顔のおすそ分け」というコンセプトで、何とかまとまった。バンドで演奏している時の気持ち。そして、音楽を楽しんでいる時の気持ちは、どのバンドも同じ思いを持っている。これが、共通点と言えるところ。だから、みんな1つなんだというその気持ちを忘れないように、観客にも同じ気持ちを共有してもらいたいと考えたのだった。
次にやることと言えば、ポスターとチラシの作成。それから、今回はイベント時に隣のカフェで、オリジナルのドリンクとスイーツを出す予定だからその準備等々。期間が限られているから段取りよく進めていかなければね。
Afterglowのモカの母親がデザイナーなので頼んでみるのも一手。それに、ポピパの沙綾のパン屋さんとか、Afterglowのつぐみの珈琲店からも何かアドバイスがもらえるかもしれない。
バンドメンバーの中には、カフェやスイーツが好きで、よくお茶している子たちもいる。ポスターやスイーツ関係は大体決まりそうだ。何だか面白そうな企画に思えてくる。そして、いちばん肝心なのが、イベント内容。
こちらの方も大筋では決まってきたが、最後の一曲をどうするかという問題がまだ解決できていなかった。音楽を楽しむ気持ちはみんな一緒。それをお客さんたちに伝えられるような曲を最後にやりたい。どのバンドの曲もそれぞれに特徴があって、みんないい曲ばかり。だけど、どのバンドの曲を最終曲にするのか悩ましいところ。
25人全員のメンバーの気持ちは1つ。それを曲で表現するには…?
曲がないのなら…?作ればいいんだっ!!
バラバラだったバンドの気持ちを1つにしたのは正に音楽。だとしたら、一緒にみんなで曲を作れば、きっと気持ちも一つにできるはず!
本番まであと2週間ちょっと。みんなを説得して、作曲して、リハして…そして本番まで行けるだろうか?限られた時間の中では大変な作業にはなるけれど、ここはやっぱりやるしかない!
さっそく説得できそうな人たちから当たってみることにした。
第17話 バラバラの感性がぶつかって
通学路
みんなの気持ちが1つだということをお客さんに伝えるために、一番いい方法だと考えたのが「合作」という手法。それを香澄は友希那に一生けん命になって説明をしている。
音楽を楽しむ気持ち…友希那にはまだよく理解できていなかった。燐子が横から言葉を足して説明を続ける。音楽を楽しむ気持ちとは…、Poppin’Partyの演奏を初めて聴いた時のあの気持ちではないだろうかと話しかけている。明確には表現できないものの、演奏を聴いた時に感じたあの「何か」…それはきっと「楽しい」という気持ちを生み出す原点になっているのではないだろうか。
それを聞いていたリサも、あの時に感じたあの気持ちに上手く名前を付けるとしたら、燐子の言っているとおりなんだと思うと話す。友希那もあの時に「何か」を感じたはず。友希那にその気持ちがあるならば、きっとみんなと一緒に曲が作れるはずだと燐子は続けた。香澄の説得は上手くいき、Roseliaは参加してくれることになった。
友希那は少しだけ迷っていた。自分がRoseliaの代表として参加してもよいものだろうか?コミュニケーションならば、リサの方が得意分野のはず。リサは、Roseliaのことを一番よく分かっているのは自分ではなく、友希那の方だと。Roseliaのメンバーはみんな友希那に惹かれてバンドに入ったのだから、友希那はよくも悪くもRoseliaそのものなんだと話し、友希那が代表として参加することを勧める。
CiRCLEスタジオ
スタジオに入ると、彩や蘭、こころが待っていてくれた。友希那はスタジオ入りが遅くなったことを謝ったが、こころは代表5人が揃わないと意味がないことなのだから、揃ったことに遅いも早いもないと独特の感性で友希那を歓迎した。
それぞれのバンドからの代表5人が集結した。早速曲作りに入ろうと蘭は早々に提案。きっと途中でぶつかり合うのだから…。友希那も同様なことを言う。だけど、ぶつかり合ってもいいんだ。バラバラだけど、ハートは1つなんだ。香澄が言ったようにね。
彩はかつて麻弥が言っていたくだりを引用し、バラバラの感性がぶつかり合って音楽が生まれるからバンドは面白いのだ、だからきっとこの代表の5人でいい曲がつくれるはずだと主張。友希那は、蘭に対し、いい曲が作れるように頑張ろうと声をかけてきた。蘭もどぎまぎしながら返答する。本当の意味でいい曲が作れたらいいのだけど…。
こころはいいことを思い付いてしまった!こういう時にふさわしい例の掛け声!
「ハッピー!ラッキー!スマイル!イエーイ!」
返答に困る友希那と蘭。今度はこの掛け声を5人で言ってみようとこころが音頭を取る。香澄と彩がこころと一緒に掛け声を言ってみる。それを聞いていた蘭は、可笑しくてプッと吹き出してしまう。友希那の口から笑い声が…。すっかり馴染めた5人だった。
きっと今ならいい曲が書ける!そんな気がする。香澄は心の底からそんな気持ちが湧き起こってきた。
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