オープニング 一年生代表のことば
花咲川女子学園 1-A教室
A組の教室では、友達を待たせて、香澄が学級日誌を書いていた。日誌に目をやり、「小学生の絵日記なのかと思った」と横から有咲が一言。そばにいたたえも「作詞はすごくうまいのに、作文はヘタね」とズバリ。
あと1週間で、1年生も終わってしまう。このクラスに在籍してみんなといるのがとても楽しいものだった。香澄がクラスをリードしてくれたから。そしてクラスがうまくまとまったのも間違いなく香澄のおかげである。香澄は来年も同じクラスでメンバーと楽しく過ごしたいと思っていた。
クラス分けがどうなるかはわからないけれど、お弁当は今まで通り、みんな一緒に中庭で食べようと沙綾がみんなに提案する。香澄は花女に来て本当に良かったと話し始める。
香澄と出会えたおかげで、1年間が本当に楽しかったとりみも回想する。花女に行くと決めた中3の時の香澄をみんなで褒め称えるべきなんだろうな。
そんな話をみんなでしていると、先輩である紗夜が珍しく1年教室に現れた。というのも、生徒会からお願い事を持ってきたのである。花女では、1週間後の修了式に各学年の代表者が「代表のことば」を述べるというしきたりがある。
その1年生の代表者に、有咲を推す声もあったのだが、最終的には香澄に「1年生代表のことば」を発表してもらおうということに全会一致で決定したというのだ。なぜ、香澄なのか?それは、1年間を通して充実した学校生活を送っていたように、先生方からも見えたから。
紗夜からの提案に、ちょっと驚いた香澄だったが、もちろん、その話を引き受けることにした。花女への感謝の気持ちを込めて、きっと香澄らしい「代表のことば」が聞けることだろう。
第1話 蘇る、桜の景色
翌日・花咲川女子学園 中庭
香澄は、夕べ考えた「1年生代表のことば」の内容をみんなに聞いてもらう。有咲やたえはそれを聞いて、小学生の作文みたいだ、内容的にちょっと違うとズバリ発言。香澄はいいことを言おうとし過ぎていて、本来の香澄の言葉ではない表現になってしまっていたのだ。
みんなが求めるのは、ありきたりの言葉ではなく、香澄自身が感じたり思ったりしたことを、香澄の言葉で聞きたいんだと有咲は熱弁するのだった。
花咲川女子学園 校門前
作文に自信のない香澄は、この仕事を引き受けなければよかったかも…と後悔し始めた。少し落ち込み加減の香澄を、りみと有咲が支えようとしている。
そこへ、こころたちが登場!はぐみと美咲も一緒だ。香澄が「1年生代表のことば」を述べることはすでに知っていた様子。みんな自分のことのように喜んでくれている。なのに、自分の作文力といったら…。みんなの笑い者だけにはなりたくない。有咲からの言葉に、香澄はプレッシャーを感じてしまった。
こころたちと仲良くなれたのも、こころの家での楽しいお花見がきっかけだったことを香澄は思い出した。太陽のキラキラの中で、桜の花びらがひらひらと舞って…みんなの笑顔に包まれて夢のように過ぎた一日…。
みんなと楽しく過ごせたあの時の気持ち、香澄は、お花見の話は代表のことばに絶対に入れたいと思った。そうそう、商店街の応援ソングを作った時もそうだった。何度も商店街に足を運んで感じ取ったあの空気、それがいい具合に自分らしい歌詞につながったことを思い出した。
りみや有咲の助言で、代表のことばに何を語ればよいのか、香澄はちょっとだけ分かったような気がした。花女に入って感じた1年分のキラキラドキドキをもう一度、自分の感性で振り返ってみようと思った。そして、みんなからの大きな期待にしっかりと応えようと思った。
第2話 集いの場所
羽沢珈琲店
羽沢珈琲店にみんなが集まっていると聞き、香澄たちはさっそく足を運んでみた。先輩たちも含めてみんな勢ぞろいって感じだ。どうやら香澄が「1年生代表のことば」を述べることになったという話で持ちきりのようだ。
彩は、自分も2年生代表に立候補してみようか?などと言い出す。彩は香澄から少なからぬ刺激を受けていた。だから、香澄を見ると、自分ももっと頑張らなきゃ!と感じるようだ。
翌日 ・CiRCLEカフェテリア
この1年間を振り返るとしたら、やはり原点のCiRCLEだ。ここには本当にたくさんの思い出がある。まさにここはガールズバンドパーティが始まった場所である。方向性がまるで異なるバンドが結集してライブを成功させたという紛れもない事実がある。「ドキドキで楽しい」という気持ちはどのバンドも一緒だったからである。言うまでもなく、ポピパのそれぞれのメンバーたちにとってもそれぞれの思い出が詰まった場所なのである。
なつかしい思いに浸っていると、リサと友希那がやってきた。二人は次のライブに向けて個人練習をしに来ていたのだった。お互いに「あの時」のお礼を言いながら、そんなこともあったかな?と思い返していた。
そして、友希那の口から、ポピパとRoseliaで対バンライブができたらいいと思っていると聞き、香澄たちは一同驚く。でも、一緒にライブがしたい!という思いは強かった。これが実現するといいけれど…。
第3話 交差する偶然
数日後・ショッピングモール フードコート
有咲は、香澄のことが心配で仕方がなかった。香澄は、言いたいことが少しずつまとまってきたと話す。りみは「1年生代表のことば」も、いつものように香澄らしく作詞するつもりでやれば、きっといいものになるはずだと励ます。
そんな時に、りみにメールが入る。メールの内容がピンと来なかったけど、書いてあるとおり、後ろを振り返ってみると、そこにひまりたちがいた。
afterglowのメンバーたちもポピパのメンバーと、それぞれに情報交換をしていたことを知り、香澄はちょっとすねている。だけど、香澄はすぐに蘭たちと一緒に行った天体観測のことを思い出し、対抗心を燃やした。
ショッピングモール
いつの間にか友達が増え、楽しい思い出もたくさんできた。これもバンドをやってきたからなのだと、つくづくりみは思った。花女だけでなく羽丘の人達とも仲良くなれたし。もし花女に入ってバンドをやらなかったら、羽丘の人達とは絶対に接点はなかった。香澄は、この事実は本当に「奇跡」みたいなことだと感じた。
モールではいろいろな人達と偶然に出会うことがある。偶然にも日菜と麻弥・薫と顔を合わせ、有咲は、もし香澄がバンドをやっていなかったら、薫たちとも絶対に接点はなかっただろうなと思った。
麻弥たちは、このモールに4月予定の演劇部新入生歓迎公演のための準備で買いい出しに来ていたのだった。薫の話を聞き、自分たちに訪れた「奇跡」が新入生の身にも訪れてほしい、楽しい学校生活を送ってほしいと香澄は願った。
そして、いろいろな人達と出会って、感じたことを「1年生代表のことば」に散りばめようとしていた。少しずつだけど、その時々の大切なことばが香澄の頭の中に集まってきた。
薫の、「かのシェークスピアは…」を聞き、りみはつくづく「薫はいつ見てもカッコいいな」と感じていた。憧れの薫に出会えて、りみは言葉をなくしていた。
第4話 きっかけ
商店街
香澄たちは心に残る思い出の場所として、商店街を訪れていた。この商店街にはさまざまな思い出がある…。
すると、あるメロディが流れてきた。『Home Street』だった。りみの作曲した思い入れのある曲だ。そこへ巴たちが表れる。商店街で、4月から入学するあこのために新しいカバンを探しに行くところだった。
一緒に来ていた燐子は、香澄にこっそりとアドバイスをする。きっとみんなは香澄の言葉を期待しているはず。だけど、その期待に応えようとせずに、ありのままの言葉で、香澄の言葉でみんなに届けてほしい…。
「1年生代表のことば」はもう一息のところまできている。あと少しで完成する。商店街と言えば、やはりあそこに行かなければ!ハッと思いついた香澄は、りみと有咲を促して、行き先も告げず、さっそうと走り出す。
第5話 言葉、溢れて
ライブハウス 楽屋
3人で訪れた場所というのは、ライブハウスの楽屋だった。香澄たちがバンドを始めるきっかけをくれた人と会うというのだ。有咲もりみもこの場所に来てとても緊張している様子だった。これから会おうとしている人というのは、りみの姉でもあるゆり先輩だった。
普通に生活していても、こういった場所で姉に会うというのは、逆に特別なことなので、りみは余計に緊張しているのだった。
会場はすでに超満員、チケットもソールドアウト。姉にとっては高校生活最後のライブだから、観客もかなり気合が入っている様子。もうすぐ本番という場面なのにもかかわらず、香澄たちのこの楽屋への訪問を許してくれたのだった。
…あの日、Glitter*Greenのライブを観ていなかったら、香澄は絶対にバンドはやっていなかった。ゆり先輩は香澄にバンドを始めるきっかけを与えてくれた人だ。だから、絶対に話がしたいと思った。
そんな香澄によって集められたガールズバンドパーティのきっかけでもあるということ…。そんな流れがあったということだけでも、りみはとても嬉しい気持ちになった。あの日、りみや有咲、香澄が偶然にもこのSPACEで出会ったことが、今のこの瞬間に繋がっているなんて想像もしていなかったことだ。
元を辿れば、あの日、星のシールを見つけている途中で有咲に出会い、ライブにも一緒に行くことになったんだったっけ…。
いろんなことが偶然に重なり合って、今という現実に繋がったのだ。そう考えると感慨深いものさえ感じてくる。
そんな話に盛り上がっているところへ、打ち合わせが終わったゆり先輩が楽屋にやってきた。
香澄は、一番最初に観たライブ、全部がキラキラしていて、すごくドキドキして本当に最高だったと話し始める。高校生になってすぐのことだったから、香澄自身も感動もひとしおだったのだ。Glitter*Greenと出会えたから、今の自分がこうしてある。偶然だったにしてもやはりGlitter*Greenに感謝したい!香澄はそんな思いを抱いていた。
もし感謝するとしたら、そんな小さな偶然を育てた自分たちに感謝すべきでは?とゆり先輩に言われて、偶然という言葉について考えてみた。
むしろ香澄たちが、その偶然をとても大切に思って、大事に大事に育ててきたんじゃないのか…。そう言われて、香澄はすごく納得できた。
舞台袖からGlitter*Greenのライブを観て、感動のあまり、香澄の心は言いたいことで溢れてきた。みんなに伝えたい言葉が、たくさんたくさん溢れ出してきた。
エンディング 君に伝えたい
修了式当日 花咲川女子学園体育館
いよいよ香澄の番が近づいてきた。そして、名前が呼ばれ…。「1年生代表のことば」が始まった。
ドキドキで楽しい…本当にそんな1年間でした。
キラキラと照らす太陽と、ひらひらと風に舞う桜の花びら。1年前、花女の門をくぐった時のあの景色。そして新しい何かが始まる予感―今でも昨日のことのように思い出します。
高校生になりたての私には、すべてのことが輝いて見えました。電車での通学。体育館から聞こえる部活の掛け声。新しい友達と交わす朝の挨拶-
この花女には、いろんな場所にキラキラドキドキがありました。この花女に来ていなかったら、出会えなかったたくさんの大好きな仲間に出会えました。その大切な仲間たちと一緒に、音楽にも出会えました。
それはこの花女に来たからこそ起こった小さな偶然でした。私はついこの前まで、仲間や音楽に出会えたことを『特別なこと』のように感じていました。だけど、それは違った。私が今こうしてここにいるのは、ほんの小さな偶然が集まって起こったことなんだと思います。
だから-きっとこれは私だけじゃなくて誰にでも起こることです!今、この瞬間にもきっと偶然は起こっています。みんな今すぐ、偶然を探しに行こう!!そして、その偶然を大切に育ててください!それができるのは自分だけだからっ!!
その偶然が大きく育った時、もしかしたら…『奇跡』って呼ばれるものになるかもしれません!この花女は、そんな『奇跡』が起こる学校です。これから入ってくる新入生たちにも、私達に起こったような『奇跡』がきっと訪れると思います!
そして、2年生になった私達にも、またたくさんの『小さな偶然』が起こるはずです。その偶然を集めて、育てて、もっともっと大きな『奇跡』につなげたいと思います!
花女のみなさん!私達にたくさんの素敵な偶然をくれてありがとうございました!たくさんの大好きな仲間に出会わせてくれてありがとうございました!
花咲川女子学園 1年A組、戸山香澄…
バンドリ!イベントストーリーシーズン1:君に伝うメッセージ「エンディング」ストーリー転記
と、心を込めて精一杯自分の気持ちや思いを堂々とことばにした香澄だったが、最後に、この思いは絶対に歌にしたい、そして、その時はポピパのライブに来てほしいと、やっぱり思った通り、宣伝になってしまっていた。
本当に素晴らしい、やっぱり香澄にお願いして大正解だったと紗夜から言われ、ほっと胸を撫で下ろす香澄だった。
花咲川女子学園中庭
香澄は本当に堂々としていて、緊張しているようには見えなかった。全ての人の心を打つ素晴らしい「1年生代表のことば」だったと思う。聞いている途中からハンカチを目にした生徒もたくさんいたはずだ。りみもまた、香澄のことばに感動し、涙した者の一人だった。そして、誰よりも香澄のことを心配してアドバイスをしてきた有咲も同様だった。
本当に聞きたかった香澄のことばがちゃんと聞けた…この時だけは有咲も素直に香澄のことを褒め称えた。みんなの前でポピパのことを宣伝した手前、これからもステキな新曲を出し、みんなに認めてもらわなければいけない!
さっそく、例の蔵で打ち上げ決定。新曲の話をしよう、パンを一緒に食べよう、盛り上がったらついでにお泊りもしちゃおうと、有咲抜きで、勝手に盛り上がる4人。これこそいつものポピパ!一体どんなバンドに成長していくのか本当に楽しみである。
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