オープニング 期待が募る年初め
神社 神楽殿
近くの神社では、年明け早々から、巴たちの大太鼓イベントの準備に、たくさんの友達が駆けつけてくれた。あこは自慢の姉が太鼓を叩くのだから、きっと初詣のお客さんでいっぱいになるに違いないと、ワクワクが止まらない。
年末から何度も集まって、猛練習した甲斐もあり、香澄たち3人も短期間で上達した。この調子なら、きっと大成功間違いないだろう。
巴たちを応援しようと、蘭をはじめ、紗夜や有咲、花音もこの神社に駆けつけてくれていた。有咲は香澄のことが心配で、花音もこころのことが心配でならなかった。何となく香澄とこころは性格的に似ているところがあって、そこのところが心配なのだった。
また、何かしでかすんじゃないか…っていう。だけど、本当はバンドのメンバーが出るのだから応援したいという優しい気持ちでいっぱいになっているのだ。いったいどんな演奏になるんだろう?あこは楽しみで仕方がなかった。
美咲はちょっとだけ不安になっていた。いつもはミッシェルの被り物で隠せてはいるけれど、今回ばかりは生身の美咲としての出演。ハロハピではないのだし。ミッシェルじゃダメだよね~。分ってはいるんだけど、何かソワソワと落ちつけなかった。
楽器の準備は終わり、演奏本番まではまだ時間があるので、あこや蘭たちはお参りを先に済ませてから屋台を覗いてみることにした。
第1話 不思議な初夢
神社 参道
参道脇にはたくさんの屋台が並び、いかにもお正月らしい雰囲気を醸し出していた。道行く人の振袖姿に見とれたり、華やかな正月飾りに目をやったり、見るもの全てが新鮮に感じられた。
あこは、お参りが済んだ後、蘭が何をお願いしたのかとても気になった。あこが聞き出そうとしていると、そこへ紗夜が一言。
願い事は『話す』と願いを手放すという意味にもなるので、話さない方がよいのだと教えてくれた。それを聞き、あこ自身は毎年願い事を話していたので、今年は絶対に言わないようにしようと思った。
今度は、有咲が一言。有咲のばあちゃんによれば、『言葉にした方が願いは叶う』のらしい。花音も続けて、占いの本によれば、『願い事を3回唱えると叶いやすい』らしい。
どの謂れが本当なのか分らないけれど、一番いいのは、自分の思いや考えに従って、自分の行動を決めればいいということなのかな。
結局のところ、願うだけではダメ、自分で行動を起こして自分で努力しないことには願いは叶わないような気がする…。
ところで、皆さんはもう初夢は見ましたか?物知りの花音によれば、元旦から2日の夜までに見るのが初夢だそうです。
あこは、どんな夢を見たのか、メモを見ながらみんなに話し始めた。『辺りからは歓喜を謳う声が響き、天から轟く雷の合図で宴が開かれる』というものだった。あこにとっては、カッコいい初夢だったかもしれないが、みんなには全く意味が分からなかった。
あこは、宴とは『FUTURE WORLD FES.』のことで、大成功を収めるという意味だと解釈していた。夢で大成功を収めたからといって、もちろん本番でも上手くいくとは限らない。ただそんな夢が見られて嬉しい気持ちになれた。他の人達の初夢はどうだったんだろう?ちょっと気になって紗夜にも聞いてみた。
紗夜の見た初夢は…『大きな山を越えたその先に、たくさんの人が喜んでいる姿が見える』花音の見た初夢は…『魔法の果物をもらい、それを振る舞ったら、みんなが笑顔になれた』有咲の見た初夢は…『何かの音楽が流れていて、とても気分がよく、花びらが舞っていた』蘭の見た初夢は…『風に吹かれる』
蘭は、夢の中身について考え込んでいた。何となくだけど、普通の風じゃなくて…。すごく不思議な感じで、それでもって、優しい雰囲気で…。
誰か『一富士二鷹三茄子』の夢を見たんじゃないかと思ったけれど、縁起がいいと言われている初夢をみるというのは難しいのかなあ。
初夢の内容は違ったけれど、5人とも縁起がいい夢には間違いない。きっと今年もいい年になるだろう。
第2話 思いがけない贈り物
神社 参道
立ち並ぶ屋台の前に来ると、食欲を誘ういい匂いが漂ってきた。朝早かったから、みんなお腹が空いていた。焼きそばやたこ焼きの匂いに誘われ、あこと蘭はそれぞれ買って半分こして食べることにした。
あこは蘭に思いっきり甘えてきた。傍から見ると、まるで姉妹のようにも見える。二人のやりとりを見守っていた紗夜がふと視線を上げると、向こうから賑やかな声が響いてきた。大道芸だ!猿回しが始まっている!
お正月ならではの風景。芸も達者とくれば、集まる人だかりも大きくなるわけだ。おサルが扇子を持って踊っている。
有咲は思わず声を上げた。おサルと目が合ってしまったのだ。ばあちゃんから、目が合ったら襲ってくると聞かされていたのを思い出した。おサルの目を見ないで芸を見るなんてできっこない。
すると今度は花音がギくり!おサルと目が合ってしまったのだ。みんながびっくりしていると、おサルがこっちにやってくる!しかも、リンゴを手に持って。リンゴを投げつけられるかと思ったが、そうではなかった。
おサルは花音の前に来ると、持っていたリンゴを花音に手渡す。花音は差し出されたリンゴを手に取った。これって、もしかして…『魔法の果物でみんなが笑顔になれる夢』?
まさかおサルからリンゴを手渡されるとは思ってもいなかったが、もしかしたら、これが夕べ見た夢のことだったとしたら…そう考えると、花音はなんだか嬉しい気持ちになれた。
第3話 夢の導き
神社前
屋台を抜けて、神社前ではお餅つきが始まっていた。みんなで行ってみると、あんこに磯辺、きなこ、からみ餅など、いろいろな種類が用意されていて、どれもおいしそうだった。さっそく、あこは全種類1個ずつ味わってみることにした。
花音もお餅をもらったが、量が多すぎて、全部は食べられなさそうだった。紗夜もたくさんのお餅をもらい、3人分以上はある量だった。紗夜の困り顔を見て、あこは太鼓のみんなに差し入れしたらどうかと提案した。
紗夜が山盛りのお餅を届けようとした時、香澄の声がした。みんなに手伝ってもらいたいことができて、捜していたところだった。美味しそうなお餅を見て、お腹ペコペコの香澄は大喜び。
神社 神楽殿
神楽殿で準備をしていた巴たちは、美味しそうに山盛りのお餅をたいらげた。そんな様子を見ていたあこは、ふと考え込む。この状況、なんかどっかで聞いたことある気がする…みんなが喜んでいて…。
花音はもう気付いていた。これは紗夜の初夢。『大きな山を越えたら、みんなが喜んでいた』っていう。これは私の初夢?紗夜も確かにこの雰囲気がこの状況に似ているような気がした。
美味しいお餅を食べ終えて、一息ついたところで、香澄からの頼み事に取りかかった。神楽殿の飾り付けをすることになったのだ。元はと言えば、こころの思い付きなのだが、神主さんがノリノリでオッケーってことになったからだ。せっかくのお正月だし、賑やかに楽しくやりたいよね、こころの気持ちは素直によく分かるよ!
ところが、神楽殿の周りには飾れそうなものは1つもなかった。みんなで手分けして探してくることになった。すると、香澄が有咲に頼みごとをする。有咲しかできないこと…。いったい何を頼んだのやら…。
第4話 華やか、賑やか、縁起よく!
神社 参道
蘭は、今日の日のために一生けん命に動き回るあこの姿に感心していた。今年最初の姉の太鼓だし、姉のためなら力になりたいと、あこはいつも思っている。二人は参道に戻ってきたが、屋台の飾りを見つけて、さっそくあこは飾りを借りに急いだ。
あこなりに、一生懸命に説明するのだが、とても慌てている状態だった。いつも冷静な蘭は代わりに説明してあげた。ありがたいことに店主は優しい人で、簡単に協力してくれた。神楽殿に飾るのだと説明すると、『それは縁起がいい』と喜んで貸してくれたのだった。鏡モチにだるまを借りることができて、本当によかった。
何を思い付いたのか、ものすごい勢いであこが駆けて行った。行き先は、さっき見た猿回しのお姉さんのところ。まさかね、ひょっとして?
あこは今度は落ち着いて頼み事ができた。お昼過ぎに神楽殿で行われる和太鼓の演奏に合わせて、近くで猿回しをやってもらうというアイデア。やったー!すぐに了承してもらえた。神楽殿の和太鼓演奏と猿回し芸。たくさんの人が集まること間違いなし!
神社 神楽殿
一旦、借り物を持って、神楽殿に戻ってみると、紅白幕にダルマ、鏡餅、それに門松などがあった。今日の日にふさわしい飾り付けができそうだ。
蘭もまたあこと同様に、素晴らしいアイデアを思い付いた。蘭は、もう1つ飾りを足そうと考えている。何を準備しようとしているのだろうか?きっと蘭にしかできない飾り付けを考えているのだろう。
第5話 舞い上がる紙吹雪
神社 神楽殿
全体的な飾り付けが終了し、巴が見てみると、お正月にふさわしい豪華さバッチリの出来栄えだった。ありとあらゆる縁起物を詰め込んだような、そんな雰囲気に仕上がっていた。あこの目を引いたのは、蘭の書いた看板だった。『新春和太鼓演奏』とある。
あこや蘭たちの思いを酌んで、巴は嬉しさと同時に身が引き締まる思いがした。
開演時刻
開演時刻になり、巴たちは気合いが入った。お揃いのはっぴ姿にきっちり結んだ白い鉢巻。ソイヤツ!とお互いに声をかけ会い、息を揃えた。
これまでの練習では、太鼓のリズム打ちだけでなく、振り上げる腕の高さもみんなで揃える練習をしてきた。そうすることで、叩くタイミングのズレが防げるのだ。練習の成果もあり、ピッタリと息の合った演奏が続いている。
すぐ横で、和太鼓の音に合わせて、おサルが踊っている。心地よい和太鼓の演奏と猿回しの芸に、思わず観客たちの笑みがこぼれる。
お姉ちゃんたちが楽しそうに演奏している。そしてお客さんたちも満足そうな笑顔になっている。そんな様子を見て、あこはこの時のために頑張ってきて本当によかったなと感じた。
紗夜は、さっきから神楽殿に姿を見せない有咲に気づき、心配をしていた。そういえば、香澄に連れて行かれたっきりだ。有咲の居場所を詮索していると、聞き覚えのある声で、アナウンスが…。そうそう、有咲の声だ!
『お集まりのみなさんにとって、今年一年も素晴らしい年になりますよう祈っています!』と有咲は述べ、一面に紙吹雪が舞った。素晴らしい盛り上がりだ!
蘭は気付いた。これって、有咲の初夢?『何かの音楽が流れて、花びらが舞ってた』そして、自分の初夢も『風に吹かれる夢』だった。風が吹いて、ふわっと紙吹雪が舞い上がっている!とってもきれいな風景だ。お正月にふさわしい華やかさがある。紙吹雪の中に佇む蘭。これも悪くないな!と感じた。
エンディング 幸運は風に乗って
神社 神楽殿
巴たちの和太鼓演奏が大盛況のうちに終わり、神楽殿の後片付けも済ませ、一同ほっとしているところ。神楽殿はあんなに賑わっていたけれど、今はいつもの静けさを取り戻している。まるで、夢から覚めたみたいで、ちょっと寂しい感じもする。
今日という日、誰にとっても充実した一日となった。全員の初夢が正夢になったのだから。
神社で風が吹くことは縁起がいいと聞いたことがある。特に今日のような印象に残る風ならなおさらのこと。神様が頑張った人たちを褒めているのかもしれない。
あこはまだ気付いていない風だったけど、あこの見た初夢も実は正夢になってるんだ!
『辺りからは歓喜を謳う声が響き、天から轟く雷の合図で宴が開かれる』
歓喜を謳う声とは、お客さんの歓声だとしたら?轟く雷の合図で宴が開かれるとは、和太鼓の演奏を言っているのか?だとしたら、あこの夢も叶っていることになる。
あこは自分の夢をFUTURE WORLD FES.とつなげて考えていたから、正夢ではなかったとがっかりしていた。でももう実際にFUTURE WORLD FES.は夢の中の場所ではない。夢に頼らなくても、力は出し切れる、頑張れば手の届くところにあるのだ。後は、Roseliaを信じて前進するのみなのだ。
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