いつも一緒にいる友達のことなら、ちょっとした変化でも、何となく気付くよね。やさしい一言で、救われることもある。難しいことかもしれないけれど、辛そうにしている友達にはそっと寄り添いたいと思うmild_colorです。
オープニング 突然のメール
イヴの部屋
イヴは今日も、自分の部屋で瞑想をしている。武士道を磨くための日々の日課なのだ。ちょうどやり終えたところに、メールが来た!
なんと、フィンランドに住むハンネからのメールだった。たくさんの出来事が書かれていた。ハンネと一緒に日本語の勉強をしたことが懐かしく思い出される。そのハンネが、来週の土曜日に日本にやって来る!日本でできた、イヴのたくさんの友達に会えるのが楽しみだと書いてある…。
まずは、ハンネに返事を書かなくては…。それにしても来週の土曜日がとっても楽しみだ。
花咲川女子学園1-A教室
授業が終わり、これから行う蔵でのバンド練習が楽しみだと香澄が話す。ポピパの新しい曲をみんなで考える予定なのだ。香澄たちは、いつものメンバーで一緒に帰ることにした。
そんな仲の良いポピパのやり取りを聞いていたイヴが、香澄たちに声をかけてきた。香澄は、イヴも一緒に帰ろうと誘う。嬉しそうに返答するイヴの弾んだ声に、沙綾はきっと何かいいことでもあったんだろうなと感じた。
イヴは香澄たちに、来週の土曜日にイヴの友達であるハンネが日本に遊びに来るということを話した。みんなハンネに会ってみたいと言ってくれた。
ハンネは、すごく優しくて友達思いな性格。イヴが日本に行くことになった時、ハンネはイヴと一緒にずっと泣いてくれたほどの仲良しだったのだと話す。そのハンネが日本に来る。そして、日本の友達に会いたいと言っている…。だから、自分の大切な友達をぜひハンネに紹介したいとイヴは思った。
そして、ふと、イヴはあることを思い出してしまった。ちょうど、有咲が教室に入ってきたタイミングで、イヴは一足先に帰ることにした。
イヴの部屋
実は、あの時、ハンネとのやり取りを思い出してしまって、その場から逃げるような形で帰ってきてしまったのだった。
日本にたくさんの友達ができたと、ハンネに伝えてしまったこと。一体どうしたらいいのだろう。イヴは、カバンの中にある「武士道伝」を取り出した。きっとこの本の中に、今の自分の霞んだ心を晴らす大切な言葉がしたためられているはず。
武士とは、常に…嘘をつくこと、なかれ…
イヴは、このままでは、武士失格だと思った。
第1話 ブシ失格
羽沢珈琲店
イブは、羽沢珈琲店でのバイトに集中できないでいた。気になっていることがあるのだった。
ハンネについてしまったウソのことを、みんなに相談することができなかった。学校で、香澄たちに話そうと思うのだが、いざ話す段になると、いつも怖くなってしまい…まだ話せないでいたのだった。
つぐみが、イヴに仕事の段取りを告げるのだが、イブは上の空。仕事中だというのに、イヴはまた考え事をしてしまった。
入口のベルが鳴って、お客さんが入ってきた。誰かと思えば、麻弥と千聖、花音、たえの4人。不思議な組み合わせだ。席に案内すると、さっそく意気投合したように、麻弥とたえが大好きな楽器の話に夢中になる。
イヴが注文のケーキセットを運んでいくと、花音たちは美味しそうなケーキに目を奪われたが、向こうの二人は、ケーキには目もくれず、楽器の音色について熱く語っている。
自分が好きなものの話をする時は、誰もが夢中になれるものだ。イヴに時代劇の話題がフラれたが、考え事をしていて、ぼんやりとしてしまった。みんなが様子がおかしいと気付き、どうしたのかと聞いてくれるのだが…。
千聖が、イヴに、心配事があるなら、話してみないかと尋ねてくれた。それに花音も、悩みがあるのなら力になるから相談するようにと言ってくれた。つぐみもイヴの力になりたいと言ってくれている。
相談しようか迷ったが、こんなにみんなが言ってくれているのに、相談せず逃げるのは、武士として完全に失格だと思った。それに、ここにいるみんなは自分にとって、とても大切な人たち。だから、ちゃんと話したいとも思った。イヴは、なにより武士として失格になりたくないと強く思った。
イブは、勇気を出してみんなに話し始めた。
実は、今度フィンランドから遊びに来る友達のハンネにウソをついてしまったこと。ハンネに心配させまいとして、イヴが日本に来てすぐの頃、たくさん友達ができ、楽しく過ごしていると、つい言ってしまったのだ。本当は友達がほとんどいなかったのに…。
武士道では、ウソをつくことはいけないことだとされている。だけど、自分はウソをついてしまった…と、イヴは悩んでいたのだ。みんなは、それを話せば、きっとハンネも許してくれるはずだと、慰めてくれた。イヴは、ハンネに対して、自分がどう対処すべきかは何となく考えてはいた。
第2話 最高のおもてなし
羽沢珈琲店
これからもずっと、ハンネと仲良くしたい。だから、正直に話して、謝りたい…そう思った。
イヴの話にみんなは耳を傾けてくれた。イヴは、てっきりみんな、こんな自分に怒るだろうなと思っていた。ずっと長いことウソをついてきたわけだし、それを隠していて、みんなにも正直に打ち明けることができなかったわけだから。きっと武士なら切腹ものだ!
だけど、イヴの話に誰一人として怒る者はいなかった。みんなに心配をかけてしまったことをイヴは謝った…。
どうして謝る必要があるの?相手のことを心配するのは、その人のことを本当に心から大事に思っているから。だから、大事に思ってくれている人に対しては、「ありがとう」でいいのでは?
みんなの優しさに胸打たれ、イヴは心から嬉しくなり、涙がこぼれた。
さっそく、千聖はイヴのために何かしてあげたいと思った。せっかく日本に来てもらうのだから、最高の思い出を作ってもらわなくちゃ!だから、自分にもおもてなしの準備を手伝わせてもらいたい。そう千聖は申し出た。
そして、どんなパーティを開いて迎えるのがいいか、みんなでいろいろと意見を出し合った。ウサギパーティやらクラゲパーティやらアイデアが出されたが、これらはみな却下。自分がどんなことをしたいのかはもちろん大事なことではあるが、相手のことを考えたおもてなしを用意するということが一番大切だ。どんなことをすれば、ハンネが喜んでくれるのか?それを考えることが重要だ。
日本ならではのホームパーティをするというのはどうだろうか?ハンネも日本は大好きだし、日本語の勉強をするほどだから。きっと気に入ってくれるはず。
ハンネをもてなすために、何をしたら喜んでくれそうかじっくりと考え、具体化した方がいい。まず、ハンネには、武士の素晴らしさをしっかりと伝えたい。そのためには、まずは殺陣(たて)を披露して…。それから、和食を食べてもらいたいし…。
イヴの中で、ハンネにしてあげたいことがたくさん湧き出てきた。あまりにたくさんあり過ぎるので、じっくりと時間をかけてまとめてみることにした。
第3話 みんな笑顔のパーティ
イヴの部屋
イヴは、さっそく日本のおもてなしについて調べてみた。殺陣や弓道を見せるという案は、危険だから却下。もっと安全な案を考え直さないと…。きっと、図書館で借りてきたこの本を調べれば、何か良いアイディアがひらめくかも!
おもてなしは、相手を思いやる心をもって、行うこと。
これこそ日本の心。その心をハンネに伝え、きちんと謝って…。そして、最後にはハンネに日本に来て良かったと、笑顔になってもらいたい…。そのためのアイディアは…。
折り紙はどうだろう?とても日本的だし、プレゼントできるから、きっとハンネも喜んでくれるに違いない。手順通りに作ってみたが、何だか少し違う形になってしまった。イヴは、折り紙は難しいナと思った。だけど、特訓して、ちゃんと折れるようになりたいと思った。
翌日・羽沢珈琲店
約束の時間になり、羽沢珈琲店に行ってみると、ポピパのメンバーやひまりたちが集まってくれていた。みんなイヴの計画を手伝ってくれようとしているのだ。イヴは本当に心から嬉しくなった。
さっそくどんなパーティにするか夕べ考えた案を、みんなに発表した。イヴは、みんなに理解してもらうために「ホームパーティ計画書」を作成していたのだ。考えがまとまるまで時間はかかったが、料理から会場の飾りつけまで、自分なりに考えてみたのだった。
香澄はやる気満々で、準備物に目を通していた。イヴは、夕べ頑張って作ってみた折り鶴と桜をみんなに見せた。香澄はたくさん折ってあったので、その量にびっくりした。飾りつけをするには、まだ量が十分ではないため、みんなに手伝ってくれるようにイヴは頼んだ。
香澄が突然泣き声をあげる。鶴を折っていたはずなのに、いつの間にかアヒルのような形になっている!初めて折るんだから仕方ない!
何度も作っていると、それなりに楽しくなってきたけど、みんなでこうして一緒に作るのって、もっと楽しい!みんなのおかげで、きっと素敵なパーティになるはずだと思うと、イヴは今から当日が楽しみになってきた。
第4話 立派な侍
ホームパーティ当日・イヴの家リビング
ついに、ハンネの来る日がやってきた。イヴはすべての準備を整え、みんなの訪問を待っていた。やがて、玄関のピンポンベルが鳴り、香澄たちがわくわくしながらやってきた。
イヴは、立派な侍に見えるように、演劇部から衣装を借りてきていたのだった。とてもよく似合っている。みんなイヴのために、衣装を借りに行ったり、着付けを手伝ってくれたりと、細々とよく動いてくれていた。
イヴは少し緊張気味に見えたが、何か不測の出来事が起きたなら、みんなが助けてくれるはず。みんなで気持ちよくハンネを迎え入れようと、みんなで掛け声をかけた。
数分後
やがて、玄関のピンポンベルが鳴った。ハンネの到着だ!
ハンネとイヴが懐かしそうに言葉を交わしている。しかも、日本語で!みんなは驚いてしまった。イヴは、ハンネにみんなを紹介した。
いつしかイヴの緊張感もほぐれ、ワイワイと楽しく話しながら、みんなで手巻きずしを食べた。おもむろに麻弥が、ここまでどうやって来たのかとハンネに尋ねた。ハンネはここまで電車で来ていた。日本の路線は複雑で分かりにくかったと話す。イブも日本に初めて来た頃のことを思い出していた。日本語も十分にできず、誰に聞いたらいいのか分らなくて困っていたことを。
そして、イヴは、はっと気づいた。どうしたのか尋ねられ、咄嗟にイヴは何でもないと言ってしまった。ハンネにウソをついていたことを話さなきゃ。日本に来たばかりの時のことを話さなきゃ…。心の中はこのことでいっぱいだった。
困っている様子のイヴに気付き、つぐみが何とかフォローしようと、口を開いた時、横から千聖がストップをかける。もう少しだけ、イヴに任せた方がいいのだ。
ハンネは静かに、何か隠し事をしているのではないかと、イヴに詰め寄った。
第5話 大事な友達
イヴの家 リビング
イヴは、どう切り出そうかと言葉に詰まっていた。そばでは、友達が自分を応援してくれている。その声に励まされ、イヴは思い切って、ハンネに伝えようとした。
自分がハンネにウソをついていたこと。友達がたくさんできたと。日本に来た頃は、日本語もあまり話せなかったし、本当は、友達はあまりできなかったのに。ただ、ハンネに心配をかけたくないと思い、咄嗟にウソをついてしまったのだ。
イヴは、ハンネにウソをついていたことを謝った。
麻弥やつぐみが、イヴの事情を知ってもらおうと必死で言葉を付け足す。
ハンネは、よく知っていた。イヴが友達思いの優しい心の持ち主であることを。そしてハンネは、イヴがウソをついていることも、とっくに気が付いていた。
イヴは、少し後ろめたかったり、何かごまかしたりする時には、声が裏返るのだ。すごく正直であるがゆえに、そうなってしまうのだ。ハンネはそのことをよく分かっていた。自分に心配をかけまいと、一生懸命にウソをつくイヴの気持ちは、十分過ぎるくらい分っていたのだった。
ハンネは笑顔を浮かべ、嬉しそうに言葉を続ける。日本に来てみて本当によかった。イヴには、パーティを手伝ってくれたり、応援してくれたりする素敵な友達がたくさんいることが分かったから。本当のことを素直に打ち明けてくれて嬉しいと、ハンネが気持ちを伝えると、イヴは思わず嬉し泣きをしてしまった。
その様子に、千聖が優しく声をかけると、安心したのかイヴが急にハグをしてきた。ハンネは、イヴにたくさんの友達ができ、もう心配しなくてもだいじょうぶだと分かり、とても嬉しくなった。そして、みんなに親近感を強く持った。イヴはみんなとどんなふうに一緒に過ごしてきたのだろう?みんなは、イヴのどんなところが好きなのだろう?もっともっと、みんなから話が聞きたい!
エンディング たくさんの人情
イヴの家 リビング
一時はどうなることかと思いきや、ハンナとも気持ちが通じ合い、みんなでいっぱい思い出話をしながら、楽しく時を過ごした。イヴが、武士道を極めるためにやっている部活にちなんだ話など、興味深い話まで聞くことができた。
武士道とは、日本の武士の道を表すもので、心構えや考え事を言う。
武士は己の信念にまっすぐで、情に厚く、とても素晴らしい心構えを持った人である。
イヴは、そんな武士に憧れているのである。だから、ハンネにウソをついたままの自分を武士失格だと思っていたのである。今回こうして、みんなのおかげで、ハンネに打ち明けることができ、武士道を取り戻すことができたのだと話す。
イヴの語る武士道、微妙にあっているようなズレているような感じがしないでもないが、いつもどおりの自分を取り戻したイヴが、今は眩しい。
本当にあっという間に、楽しい時は過ぎ去った。ハンナも含め、みんなでパーティの後片付けを始めた。麻弥は借りていた新選組の衣装をクリーニングに出すために、イヴに声をかけた。イヴはまた、何か考え事をしていたようだ。
イヴは、今日のことを思い出していたのだ。とっても楽しかった、素敵な時間を過ごせた。ハンネがみんなと一緒に過ごしているのを見て、つくづくと自分が、本当に素敵な友達に囲まれているなあと思えたのだった。ハンナも麻弥もみんな、イヴの自慢の友達だ。本当にみんなのこと、大好きだ!
友達の優しさ、これを「人情」というなら、イヴは今日一日で、たくさんの人情を感じたことになる。本当にイヴらしい感想だ。イヴはまた一歩武士に近づいたことになる。これからもたくさんのいろいろな経験を通して、目指す武士に近づくことができればいい。イヴは、麻弥の優しい言葉かけに嬉しくなり、ハグしようと言い出す。麻弥もまた嬉しかったが、ハグはやっぱり照れてしまう…。
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