オープニング 古びたカセットテープ
スタジオで
練習を終えて、メンバーそれぞれが感想を述べ合う。いい調子でいっているはずだが、紗夜は、自分たちは遊びでバンドをやっているわけではないと主張。一方、リサは日々の成長を確認することは大事だと反撃する。
友希那は、次回のライブの曲選定について、みんなに提案する。時間的に演奏できるのは3曲程度。新曲がやりたい、中途半端なものは演奏できないなどいろいろな考えが出てくるが、結局次の練習までにセットリストを各自考えてくるように、みんなに少し強めな言い方をしてしまう友希那。
湊家 友希那の部屋
セットリストを考えていた友希那は、偶然に彼女の父のカセットテープを見つける。そして、確認のために聴いてみることにする。激しいシャウト!この心を揺さぶられる感覚。お父さんの声…。この曲から音楽への純粋な情熱を感じ取る。そして、友希那は、この曲を歌ってみたいと思う。でも今の自分にこの歌を歌う資格があるのだろうかと考えるのだった。
第1話 セットリストの最後は
翌日
全員でセットリストについて話し合う。1,2曲目はすぐに満場一致で決まったが、3曲目をどうするかについては様々な意見が出る。勢いに乗っていくか、緩急をつけるべきか考えどころだ、盛り上がりも大事だが、ずっと同じテンションの曲では単調に聴こえてしまう可能性もある、などと。
友希那は言おうか言うまいか悩んでいる。心の中では、昨日聴いたお父さんの曲を歌ってみたいと思っている。その曲をみんなに聴かせてみると、みんなすごく気に入ってくれた。だが、今の自分たちのレベルに見合ってないと感じ、今回はこの曲を諦める。
第2話 歌う資格
帰り道
さっきの曲はカッコよかった、だけど今の私たちには見合わない曲だと、友希那は言っていた…。やっぱり頑張って練習して、あの曲を演奏してみたい。メンバーたちはそう思っていた。だから、もう一度友希那にお願いしてみることに。メンバーたちは、あの曲を友希那の歌声に合う素敵な曲だと感じていた。そして、その歌声を「繊細で力強くて、時に音楽を求めすぎるあまり、まるで恋い焦がれているかのような焦燥感を感じる」と評価する。だから、友希那にあの歌を歌ってほしいと。
それに反して、友希那は、自分の歌声はそんなに純粋なものではないと…。今の私にはあの曲を歌う資格はないと。リサはすでにあの曲が友希那のお父さんのものだということに気付いている。インディ―ズ時代の曲、つまり、お父さんが本当にやりたい音楽をやっていた頃の、あの頃のお父さんの音楽への純粋な情熱、それを今の自分が歌っていいはずがないと、友希那は考えてしまうのだった。リサはそんな友希那が真剣に悩んで向き合おうとしている気持ちを誰よりもよく理解していてくれた。
第3話 未熟なままでも
宇田川家 リビング
あこは、歌う資格がないと言っていた友希那のことが気にかかっている。どうして自分たちにあの曲を聴かせてくれたのだろうか?燐子もまた、友希那が何だか思い悩んでいるようだったと。「歌う資格がない」という意味について考えているところ。資格とは、歌の上手い下手ではなく、今の気持ちのこと、あの曲が友希那にとって大切な曲だから、歌うこと自体にとても大きな覚悟が必要なのかもしれない。あこと燐子は友希那を信じ、見守り、少し待ってみることにする。
氷川家 紗夜の部屋
紗夜は、次のステージの楽曲について考えているところだった。友希那が聴かせてくれたあの曲が演奏ができるなら…と思っている。演奏技術が見合わないのであれば、そのレベルに達するまで努力するまでのこと。友希那は何を気にしているのだろうと考え込む。
湊家 友希那の部屋
友希那の歌声に合う、素敵な曲…燐子のことばが思い出される。そして、あの曲をもう一度聴いてみることに…。父はどんな思いを込めてこの曲を歌ったのだろう?
そこへ父が姿を現す。父は懐かしい曲の調べに思わず声をかけてきたのだった。友希那は父に告げる。「私はこの曲を歌いたいと思った。でも私には…」と。父は、ためらわずに歌えばいいと言ってくれた。「この曲から感じる音楽への純粋な情熱…それを私の歌声にのせて歌える自信がなくて」と友希那。「それなら、その思いをのせて歌えばいい」と父。そして、「それが音楽に対する思い、だったらそれを歌えばいい」「どんな思いを抱えていたっていい、それをぶつけろ」と父は続ける。
完成されていなきゃ演奏できない音楽なんて存在しない。たとえ技術や精神的な未完成さを思い悩んでいるとしても、その思いはとっても純粋で素晴らしいもの。父のことばにハッとする友希那。
リサからのことば。それを思い出しすぐさま電話を。「今、父にあなたに言われたことと同じことを言われた」と話す。リサの声かけに安心し、少し前向きになれた友希那だった。
第4話 友希那の決意
翌日
友希那からみんなに話したいことがあると連絡を受け、紗夜もとても心配していたが、憶測しても結局は本人から聞いてみないことには何も分らないという結論に。
スタジオ
スタジオでは、あこも燐子も練習を頑張っているところだった。Roseliaのメンバーたちが集まったところで、友希那はみんなに話を始める。先日聴いてもらったあの曲が父の曲だということ、初めて聴いた時に歌いたいと思ったこと、でも、今の自分にあの曲を歌う資格があるのか分らなかった、少なくとも資格があると胸を張っては言えないと思ったのだと。さらに、あの曲のもつ音楽への純粋な情熱を今の自分では歌いきれない思ったと話す。
「曲がレベルに見合っていない」という意味を理解したあこたち。
友希那の、あの曲と向かい合いたいという気持ちは本物…それも音楽への情熱なんだと…それに気づかさせてくれた人がいた。もし、機会がもらえるなら、あの曲を歌いたい。父の残したあの曲に、もう一度命を吹き込みたいと友希那。それが、自分にできる向き合い方だと思うからと続ける。ライブまで日がない上に、私情でみんなには申し訳ないと思っているが、でも自分は歌いたいのだという気持ちをみんなに伝える友希那だった。
友希那のあの曲を歌いたいという思いを受け止めたメンバーたちは誰一人反対する者はいない。紗夜もそれを聞いて少し驚いた様子ではあったが、あこも燐子も賛成。そして、友希那がまた少しだけ前を向いて歩き出せたことを心から喜んでいるのがリサだった。
第5話 私なりの答え
ライブ前日
ライブの練習中、友希那はメンバーたちそれぞれに注意点を事細かに伝える。友希那の気迫を感じ、それぞれが精一杯の演奏をしようと頑張った。練習を始めて3時間、熱中していたのでこんなに時間が経っているとは気づかなかった。
明日は本番。曲の完成度も申し分なく高い。これなら父の曲にもう一度、新しい生命を吹き込むことができるだろう。音楽との向き合い方については見直したと、紗夜が友希那に告げる。紗夜もこの点に関しては思い悩むところがあったから、友希那の音楽へのひたむきさがよく理解できたのだろう。
湊家 リビング
友希那は父に、自分たちの演奏を聴きに来てほしいと頼む。友希那は、音楽への向き合い方、自分なりに出した答えを歌にしてみたいと話す。
言葉少なげに話す友希那に優しく声をかける。そして、部屋を出ていく友希那を呼び止め、ライブの時に父がいつも身に着けていたシルバーのアクセサリーを手渡した。
お守りだと思って持っていてほしい。きっと、最高の演奏ができるはずだと、父は友希那を励ました。
エンディング 走り書きのスコア
出番を待つ間、あこは少し緊張していた。でも、友希那のお父さんの曲を演奏できるのが何よりも楽しみだと感じていた。リサも、友希那の父親が自分たちの演奏を観るわけだから、いつも以上に本気を出さなければ、と少し力が入っていた。
友希那の胸元には、父がお守りにとくれたシルバーのアクセサリーが光っていた。いよいよラストの曲、父のカバー曲を歌う。
友希那が歌い続ける理由は、大切なものと向き合う強さ…それを手に入れるためなのかもしれない。そう感じながら、思いを込めて歌い上げる。いつか心の底から音楽が、歌が大好きだと言えるようになることができたら、どんなに素晴らしいだろう。友希那は、今以上にもっともっと上手く歌える気がした。
いつも以上にメンバーたちの奏でる音が重なり合い、お互いに引っ張られ、一体感を醸し出している。心揺さぶられる最高に楽しい演奏になった。
楽屋
演奏を終え、楽屋に戻ってみると、テーブルの上に、父の曲のスコアが置いてあった。そして、「いいライブだった」と父からの走り書きがしてあった。
友希那は、ほんの少しかもしれないが、以前より前を向いて歌を歌えていた感じがすると話す。確実に気持ちが前を向けていたのだ。これから先ももっともっと前へ進んでいきたい。だから、この先も自分についてきてほしいと思った。
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