オープニング 3年前、あの日
スタジオ
モカとつぐみたちが、スタジオでこれから練習を始めようとしている。みんな揃っているが、ひまりの姿が見えない。そこへ、ひまりが、えらく楽しそうな様子で遅れて入って来る。いったいどうしたのだろうと思っていると、ひまりが、すごいものを発掘したのだと言って、みんなにそれを見せる。
それというのは、Afterglowとして初めて録音したCDと歌詞のメモだった。蘭が、歌詞のメモはダメだ!と制する。部屋の掃除ついでに出てきたCDが懐かしくて、ついひまりはニヤニヤしてしまったのだ。ひまりは、みんなで一緒に聴いてみようと持ちかける。今ここで、みんなで聴くのはいささか抵抗がある…。今より演奏も下手だったし、ちょっと恥ずかしい…。
するとつぐみが、今聴いたらまた勉強になるかもしれない、新鮮な気持ちになれるかもしれないし…と促す。そして、みんなでCDを聴くことになった。
このギターを弾いているのは誰だ?キーボードも全然弾けてないし。でも、聴いているうちにいろいろな思い出が蘇ってくる。Afterglowが結成されてもう3年が経つ。年月はあっという間に過ぎたが、だけど、結成の日のことは、昨日のことのように思い出されると話すのは蘭。どうも印象的な出来事だったようだ。結成の日も結成までの日のことも…。
第1話 曇天
3年前始業式・羽丘女子学園中等部
ひまりは、クラス替えの発表を見て、つぐみと巴と一緒のクラスであることを喜んでいる。モカも一緒のクラスであることが分かり、巴は大喜びする。巴は、蘭も同じクラスかどうか確かめるが、蘭だけは別のクラスになったのだった。
帰り道
ガッカリしている蘭をつぐみがなぐさめる。A組とB組なら、体育の授業とか一緒だし、今まで通りお弁当もいっしょに食べようと誘う。それに対し、蘭は、別に落ち込んでいる訳ではないと。しかし、何か理由がありそうな…。
数日後・羽丘女子学園中等部2-A
心配事を抱えた蘭は、ため息をついている。次は移動教室であることを同じクラスの者が教えてくれた。授業が始まったけれど、蘭の姿がない。
放課後
巴は、最近の蘭のことを心配している。A組の友達から蘭がフラッとどこかに行って、授業に戻らないと聞いたというのだ。具合が悪いのだろうか?でも、保健室にはいないらしい。いったいどこへ行っているんだろう?心配になったつぐみは、明日、蘭に直接聞いてみようと提案する。
翌日
蘭と挨拶は交わしたものの、理由を聞くのははばかられる。みんなに促され、巴が蘭に話しかけてみることに。最近困っていることとかないか?別に何もないと答え、逆に変だと言う蘭に、巴は笑ってやり過ごすしかなかった。
第2話 蘭の居場所
羽丘女子学園中等部2-B
朝、巴が蘭に聞いてはみたものの、蘭が授業中どこに行っているのかも悩み事があるのかも分らなかった。蘭は自分の思っていることをなかなか言葉にしないから。モカが蘭のこと、何か知っているのではないかと思ったけど…。次の時間が移動教室だったことを思い出し、大急ぎで行ってしまうつぐみたち。教室に一人残ったモカは、蘭のことで何か思い当たることでもあるのだろうか…。
廊下
A組の教室に蘭の姿はなかった。蘭はやっぱり授業に出てないのだろうか。すると廊下のその先に蘭の姿があった。モカはそっと蘭を尾行してみることに。
屋上
屋上で、蘭はモカの姿に気づく。授業中のはずなのにどうしてモカがここにいるの?っていうか、そういう蘭こそどうして屋上にいるの?モカはクラス替えのせいで、蘭と別のクラスになって寂しかったことを蘭に伝える。蘭はクラス替えのせいではないとは言うけれど、やっぱり寂しかったのかもしれない。蘭はモカに、授業に出なくてもだいじょうぶなのかと心配するが、モカは、ここで蘭が何をしているのか見ている方がおもしろいなどと言って、蘭のそばにいようとする。
通学路
モカが蘭に寄り添ってやって、授業に出なかったために、フォローするのが大変だったとひまり。最初から蘭のことを探すつもりだったのなら、そう言ってくれればよかったのにと巴。考えてみれば、クラス替えの後で、蘭と一緒にいる時間は減った。5人が一緒の時間をもっと作れたらいいのに。何か5人で一緒にやってみるというのはどうだろう?5人で同じ習い事を始めるとか、毎日絶対一緒に帰るとか、他に何かいい案はないものだろうか?もちろん蘭が賛成してくれそうなもので。みんなで知恵を絞るが、なかなかいい案を思いつかず、ため息をつくみんなだった。みんなで一緒にいるということが、こんなにも難しいことだとは思わなかったよね。
第3話 蘭とモカの居場所
美竹家
蘭の家では、学校から連絡があり、蘭が授業に出ていないということが父親に知れてしまった。蘭は、体調が悪かったと、言い逃れをしようとしたが、授業に出ないばかりか親にも嘘をつくとは感心できない。学生の本分は勉強なんだから、明日からしっかり授業に出るようにと念を押された。
蘭は、教室でのことを思い出していた。「美竹さんって、やっぱりちょっとコワイよね」「ちょっと、とっつきにくい感じするよね」
クラスに居場所がなくて、屋上にいたなんて言えるわけがない。それに、居場所がない理由についても、こんなことをモカたちにだって相談できない。どうすればいいんだろう?
翌日・羽丘女子学園中等部2-A
教室では授業が始まり、蘭はふと、心の中に目覚めたものに気づく。冷たい金網に絡まる…感情の…渦…。先生から名前を呼ばれ、注意を受ける。蘭は、授業よりももっとやりたいことがあるのに…と考えている。
羽丘女子学園中等部2-B
放課後は、それぞれの活動があり、巴は、モカに蘭の様子を見てきてくれるように頼む。足早に帰って行く巴やつぐみたちを見送り、ひとりモカは屋上へと行ってみると…。
蘭は、何やら一生懸命に考えてノートに何か書いている。スケッチでもしているのだろうか?そっと近づき、尋ねてみる。そして、ノートを取り上げ、書かれた文字を読む。
『この思い 声を枯らして叫ぶ ここが私の居場所(ステージ)』『冷たい金網に絡まる紅い感情の渦』…。『届くことのない叫び(思い)が黄昏の空に消えていく』『冷たいコンクリート 打ちつける情熱(パトス)』
蘭は、それ以上読むのはダメ、ノートを返すように言う。蘭は、自分の気持ちを詩にしてぶつけていたのだった。モカは、蘭の気持ちが手に取るように分かるいい詩だと褒める。からかいなんかではなく、本当に蘭の大変さがよく分かるし、別にそれを恥ずかしがる必要もない。蘭は、自分の気持ちをちゃんとこうして詩で表すことができている。蘭の気持ちが晴れるのならば、これからもこうして詩にぶつけていけばいいのだ。今のモカには蘭を助けてあげることができないにしても、そのノートが蘭を少しでも楽にできるのならば、きっとそれは、モカにとっても蘭にとっても、いいことに違いない。
モカは、自分が蘭の一番近くにいたつもりだったけど、寂しいのはモカの方なのかもしれない。いつか蘭を助けてあげられたらいいなと心の中で思うモカだった。
第4話 一緒にいたい
ファミリーレストラン
つぐみたちが、ファミリーレストランに久しぶりに集まっている。もちろん蘭も。5人みんなでどうやって過ごすか話し合っている。ひまりがカラオケに行こうとみんなを誘うのだが…。この前も行ったしなあ…。お小遣いが厳しいかな…。ひまりがカラオケはとっても楽しいし、ライブのまねなんかするともっと楽しくなると話す。ライブとか実際にやれたら楽しいんだろうなあと想像する。また妄想が始まったとからかわれているけれど、ひまりバンドとかどうだろう?すると、モカはギター、巴はドラム、ひまりはベースをやろうかなあなんて妄想の世界で楽しんでいたけれど、突然つぐみが、みんなに提案する。
「バンド、やろうよ!」
蘭が驚いている。つぐみは、いきさつについて話し始める。蘭とクラスが分れて、なかなか5人みんなでいる時間が少なくなってきて、どうしたら5人で一緒にいられるかをみんなで一緒に考えてきたこと。部活とかいろいろあるかもしれないけど、みんなで一緒に何かやってみたらきっと、一緒の時間がたくさん作れるはず。
蘭は、作詞の才能もあるし、バンド、いいんじゃないかなとモカ。蘭が書いた詩をみんなに見せてみたら?と誘うモカ。そんなモカにおされて、蘭は今まで書いてきた詩をみんなに見せる。つぐみたちは、蘭の作詞の才能に驚く。そして、巴は、蘭がボーカルになって作詞もすればいい曲が作れるのではないかと。本当にバンドをやってみたら?みんなで新しいことに挑戦するのは素晴らしいことだ。
つぐみがキーボードを担当することになり、蘭も作詞しながらボーカル、そしてギターもやりたいと意欲を示す。ようやくみんなで1つのことができる。それは本当に嬉しいことだ。蘭を想うみんなの気持ちが、蘭の心に響いた!蘭は、久々にみんなに笑顔を見せてくれた。
第5話 5人の居場所
数日後・屋上
蘭たちは屋上で、ギターの音出しをしている。初心者にもコピーできそうなスコアを巴が準備していた。誰もが知っているこの曲がバンドとして初めての曲になるわけだ。すると、モカが、バンド名をどうするかとみんなに投げかける。みんなで一緒にカッコいい名前を考えるのだが…。カバンから電子辞書を取り出して、それっぽい英単語を拾い出してみる。
20分後
どうやらそれらしき単語が、続々と見つかってくる。ウルトラヴァイオレット、ストラトスフィア、オムニスなどなど。一言で自分たちだということがよく表現できる単語…。蘭が「夕焼け」はどうだろう?と提案する。自分たちが練習するのはいつも夕方、それに、ここから見る夕焼けは特別にきれいだ。バンド名に、「夕焼け」という言葉を入れたら、きっといつでも今日のことを思い出せるはず。そんな蘭の思いがみんなに伝わった。
「夕焼け」を英語に直すと、いろいろあるけど、アフターグロウ「Afterglow」はどうだろう?と巴。みんなも大賛成で、バンド名は「Afterglow」に決まる。自分たちにとって大事なものができた!もしケンカをしたとしても、きっと夕焼けを見て、今日のことを思い出したら、仲直りできるような気がする。この夕日は「友情の証」だ!これからは、前よりももっともっと一緒にいられる。
現在・スタジオ
自分たちのバンド結成までのいきさつをみんなで思い出し、青春真っ只中の5人。きっと、メンバーの一人ひとりを大事にして友情を深めていくんだろうな。
エンディング あの日見た黄昏の空
スタジオ
思い出話に花を咲かせた5人組。危うくバンド名が「紫外線」になりかかったことを思い出し、「Afterglow」で落ち着いてよかったと話す。ひまりが、蘭のことを昔は素直だったよね~と。蘭自身は変わってないと思うのだけど…。あの時のつぐみの「バンド、やろうよ!」がもしなかったとしたら、「Afterglow」もなかったはず。あの日から毎日が、今までとは全然違うものになった。曲を練習したり、そのためにスタジオを借りたり、初めてライブに出てみたり。文化祭での初ライブは緊張したが、生活の中心がバンドになったという感じ。それにバンドを始めてみて、みんなのことが前よりも分かった気がする。
演奏していると自分でも気が付かないような素の部分が出たりする。巴は、アツくなるとリズムが走る、観客の声援に煽られると走るとモカ。初めて録音したCDには、そういったみんなの一面がすごくよく出ている気がする。そう考えると、この録音は、この5人の原点ということになる。この曲があるからこそ今の自分たちがあるのだ。これからもこの原点は大切にしていかないとね。
みんなはこの曲のことをすごく好きだ、思い入れがあるからなどと話していたが、蘭は少し違った。一人ぼっちでいた屋上が、モカと二人の場所になり、それが5人の居場所になって。手を差し伸べてくれたのはみんなだった。この曲も、みんなも、蘭にとっては誇り。今もこれからもずっと…。すると、蘭が笑顔に…。バンドを結成した時も、今みたいに笑ってくれたのを思い出す。みんなは嬉しくなって、もう一度笑顔を見せてくれるように蘭におねだりをするのだが、照れているのか、ふて腐れてしまう。そんな照れてる蘭もかわいいんだけどね。
モカが、蘭に尋ねる。以前詩を書いていたノートは、今はどうしているんだろう。まだ使っているのかな?作詞の時しか使ってないことが分かり、モカなりに安心する。この5人組のうち、誰かが悩んでいたら、それを支えたい。誰かの悩みはAfterglowみんなの悩みだから…。この5人がいつも笑顔でいられるようにずっと一緒にバンドを続けたい。大好きなみんなと一緒にいたい。そしてこれからもずっとだよ。
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